【12話】「男の正体」(さおぺろ)
「輝、あいつの事好きなの?」
春起がニヤニヤしながら聞いてくる。
自然と顔が曇る。
こいつも人見知りだったのかな。
遊ぶ前と後じゃ全然人が違う。
「輝、お前分かりやすいなー。可哀想だから言ってやるよ。
葵と隣のクラスの男子、あいつらは…」
耳を塞ぎたくなる。
「同じ委員会の委員長と副委員長なんだぜ。」
輝の顔が少し晴れる。
が、朝の事を思い出し、また曇る。
「ホントわかりやすいなー。あいつら飼育委員なの。来てばっかりだから分からなくて当たり前だけど、
学校裏で捨て犬を飼ってるんだよ。」
朝の事といい、昨日の事といい、怪しすぎる為か、納得がいかない。
「じゃ見に行ってこいよ。学校裏。」
ご飯が喉を通らず、仕方なく学校裏に向かった。
「もう大丈夫だね!」
「あぁ、これで大丈夫だ。」
葵の声と男の声が聞こえる。
飼育小屋を覗く。
そこには生まれて間もない子犬に餌を与える葵と男の姿があった。
「あれ?輝君どうしたの?」
葵が気づく。
「い、いや、なんでもない!」
慌てて目をそらす輝。
「本当によかった。昨日のお昼からいつ出産してもおかしくなかったからね。
今日の朝生まれた時は遅刻確定って思ったけど、こんなに元気な赤ちゃんでよかったよ。」
飼育委員長が笑う。
「そうだね!昨日の放課後は委員長に仕事押し付けちゃってごめんね?
…え?なんで輝くん泣いてるの?」
輝、目には大量の涙。
教室に戻るなり、葵が輝に言う。
「昨日帰り道に子犬が産まれそうって言おうと思ってたんだけどね」
舌を出して頭を叩くそぶりをする葵に輝は顔を真っ赤にする。
「か、かわいい…」
つい言葉が漏れる。
思わずニヤける春起。
「え?なんか言った?」
葵が笑いながら聞いてくる。
5時間目のチャイムと共に、輝の心の中に、恋のスタートを知らせるピストルの音が鳴った。
〜
転校最初の日曜日。
輝と葵は遊園地!?
お化け屋敷で吊り橋効果!?
次回「楽園」
お楽しみに〜!!